ここ最近40年、だいたい1983年くらいより後に建ったマンションには管理会社と一緒に管理規約とかのマンションで暮らすための規則集ががセットでついてきます。規則集の中でも特に日々の暮らしに関わってくる規則が管理規約と運用細則です。
管理規約、読んでますか?まあ、あまり読まないでしょう。しかし、管理規約はマンションで一緒に暮らしてていく上でのそのマンション特有の法律・規則です。この共同生活のための法律の根拠になっているのが区分所有法です。管理規約は区分所有法第三十条第一項の「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」に基づいて作られています。
何かしら裁判になってしまった時に、この管理規約による取り決めが持ち出されることもあります。だから、目は通しましょう。自分のためにも。
管理規約は基本的なこと、細則は細かい取り決め
管理規約にはマンションの生活ルールでも基本的で重要な事柄が書かれています。細則にはさらに細かく詳細なルールが書いてあります。
管理規約は、実は管理会社が独自に起草したものではなく、国土交通省住宅局がマンション政策の一つとして作っている「標準管理規約」を下敷きにしています。1983年に出来て以来、マンションを管理組合運営していく上で問題になりそうなことについてはその都度改正されてきました。暴力団排除、民泊規制、管理組合運営のIT化など。
ところが、分譲時に渡された管理規約が改正されることもなく「そのまま」になっているマンションが多くあります。意図的か故意かは分かりませんが、管理規約や区分所有法の趣旨に反した内容の条文を付け加え、総会で承認されてしまっているものもあるようです。
大切な生活のルール、皆が快適に暮らすための基本のルールですから、住民の皆さんが喜んで守れる内容になっているか、大切なルールが抜けていないか度々チェックしていくのは理事会の大切な仕事です。標準管理規約が改正されるたびに管理規約を見直し、文言など改正していくと良いでしょう。それ以外、自分のマンション特有の条文等はあまり付け加えない方がいいと思います。
標準管理規約は条番号もいわゆる法律の作り方に準拠して作られています。ある条文が改正されたら、同じ条番号が書き換えられます。追加の条文が必要になる時は、「第10条の2」というようになり、11条以降をずらして新たに11条を作るようなことはありません。改正箇所についても「コメント」として説明も書かれています。できるだけそっと(←必要最低限、でも本当に大切な条文についてはきちんと直す!)上手に運用していくことで改正の手間が相当減らせるわけです。これがずぼらにやっていくためのコツですね。総会でも住民の皆さんに改正の賛同を得やすくなるでしょう。
細則でマンション特有のルールを定める
細則はそのマンション特有の必要なルールを詳細に定めます。管理会社は管理費に影響する細則は必ず用意していますが、その他の、中庭や植栽に関することとか、理事会に関するものなどは用意されていないことが多く、多くのマンションでは、実は必要なのにない細則が結構あります。マンションで数ヶ月を過ごしてみて、理事会で必要と思われる細則はどんどん作っていくとよいのです。と言ってもそう簡単にルールなど作れるものではないですよね。ですので、管理規約に必要な典型的な細則については、マンション管理センターに細則モデルを使える仕組みがあるので活用しましょう。細則モデルとは標準管理規約と同様、少し直すだけで使える細則の雛型です。
マンション管理センターは「管理計画認定」でもお世話になる組織で、色々と有用な情報を提供しています。
出版物としてマンション管理センターより購入できるのが、
- 分譲マンション管理組合の「大規模修繕工事専門委員会運営細則モデル(改訂版)」
- 分譲マンション管理組合の「理事会運営細則モデル」(改訂版)
- マンション管理組合に適用される個人情報保護法と管理組合で作成する名簿の取扱いに関する細則モデル(改正個人情報保護法を踏まえ改訂)
- 防犯カメラ運用細則モデル
の4種類。
管理組合の登録、「マンション管理サポートネット」への加入、「マンションみらいネット」へ加入するとサイトにある細則モデルを参照することができます。
- 〇〇マンション使用細則及びコメント
- 専有部分の修繕等に関する細則及びコメント
- 専用庭使用細則及びコメント
- 駐車場使用細則及びコメント
- 自転車置場使用細則及びコメント
- ペット飼育細則(例1)
- ペット飼育細則(例2)
- ペット飼育細則について(参考)
- ペットクラブ会則モデル(参考)
- マンション標準管理規約第22条第2項細則モデル(開口部の修繕等)
- 管理費等の徴収及び滞納処理細則モデル及びコメント
- 防犯カメラ運用細則モデル及びコメント
- マンション管理組合に適用される個人情報保護法と管理組合で作成する名簿の取扱いに関する細則モデル
- 理事会運営細則モデル及び細則モデルコメント
- 大規模修繕工事専門委員会運営細則モデル及び細則モデルコメント
こちらの方が細則の種類が揃っていますね。他に細則モデルを公表しているサイトや書籍を探してみましたが、今のところ見つかりませんでした。ただ、外部から見られる形で細則や管理規約を置いているマンションのサイトがあちこちにあることはあります。
マンション管理士や弁護士の手を借りる
この辺りの細則を整備すれば大抵のマンションでは支障なく管理運営ができると思いますが、内容についてはよく見る必要があるでしょう。例えば自走式・機械式駐車場は、それぞれの区画で駐車できる車のサイズと重量が厳密に決められています。最近は大型化に加えEVなど大変重量のある車が増えてきていますし、火災事故も起こっています。どのような車がどの区画に入れられるか、月額の駐車料金などはマンションごとに違うので独自に細則に明記しなければなりません。また契約書の書式も細則に入れておいたりします。
細則モデルを使って細則を作ったはいいが、追加の項目を入れたいとか、全くモデルのない細則を作りたい、また完成した細則に問題や抜けがないか確認したい時などはマンション管理士や弁護士に支援をお願いするのもいいと思います。
管理会社にもマンション管理士や弁護士が在籍していてアドバイスをもらえたりもしますが、セカンドオピニオンを出してもらうというところで別の弁護士事務所やマンション管理士事務所と契約しても無駄にはならないでしょう。