やるといいこと
管理組合は大金が動く組織です。インターネットで「大規模修繕 マンション 不正」で検索してみてください。なんとたくさんの事例が出てくることか。主な登場人物は「理事長」「管理会社」「コンサルタント」「施工会社」と多岐に渡ります。管理組合についての本には「大抵の業者は会うなり直ぐにリベートの話を持ちかけてくる」とあります。あまりにドロドロな世界がすぐそこにあります。
また、区分所有者の方々の特に経済的な状況などプライバシーが見えてしまう組織でもあります。
理事会では住民のプライバシーを尊重し、毎月支払っている管理費と修繕積立金を大切に活かしていく運営をしていく必要があります。
組合員のメンバーから理事会を「私たちは不正なことはせず、真面目に理事会をやっています」「マンションに住む皆のプライバシーをしっかりと守って運営しています」と信頼してもらうために、疑われるような行為をしない・させないようにしたいものです。
管理規約と使用細則を点検する
管理規約とは、私たちの住むマンションの生活環境を整え、快適に暮らしていくために、区分所有者の皆さんで合意した「暮らしのルール」です。学校の校則とか、会社の社内規定と同じようなものと考えてもいいでしょう。
別稿で詳しく触れますが、一般のマンションの管理規約の内容の大半は、国土交通省住宅局が発行している「標準管理規約」をベースにしています。
社会情勢の変化に対応したり(民泊の禁止とか、暴力団の排除とか)、管理組合で起きている問題(自治会との混同とか)に対応すべく、大学の先生や弁護士など専門家を集めたグループにより作られたもので、概ね2〜3年毎に改正されています。改正内容を必ずしも管理規約に反映させる必要はないですが、改正されたら内容を確認し、よい内容であれば是非改正していきましょう。
管理規約は管理組合の運営や会計など基本的なルールについて定めたものなのに対し、細則はもっと具体的な内容について細かく定めたものです。例えば、管理規約で「ペットの飼育は可とする」とし、細則で具体的に「二匹まで」とか「この書式で届けてください」とか決めていきます。細則をきちんと作っていかないと実際の運用には「どうすればいいの?」となることも多くあります。
細則については「標準運用細則」みたいなものは残念ながらありません。主な細則については住宅局から出してもらうと随分と住民的には助かりますが。ですので管理会社や管理組合で作っていく必要があります。
当初は駐車場とか、共用部分の使用細則は大抵管理会社が作っていますが、理事会の運用とか、防災時の対応などについては細則がないことが多いのです。自分たちのマンションで規則がないと困ることをよく確認して、細則を作っていくようにします。
管理規約も「標準管理規約」が改正されているのに改正せずに放置されていることも多いので是非点検すると良いですね。
理事会の運営ルールを確認する
中でも理事会については、運営細則もなく理事会が開かれているマンションが多いと思います。細則に入れられるなら入れておきたいルールを挙げます。
業者等とは複数理事+管理会社の担当者と会う
理事会では理事長がほぼ全ての事柄において権限を持っています。理事長がもっとも不正に巻き込まれやすいし、気をつけねばなりません。修繕工事の発注や業者との面談などの際は管理会社に常に立ち会ってもらい記録もとりましょう。今なら録音をしておけば文字に起こすことも簡単です。
業者との連絡は、常に管理会社経由にします。面倒ですが、常に第三者を介します。自分が理事長をしていた期間、業者と自分のみで会わなくてはならないという事態は全くなく、理事会に呼んで理事のメンバー全員で話を聞けば十分でした。逆にいうと、業者と単独で会おうとしていたりする理事長は不正を疑われても仕方がないということです。
理事長や副理事長の名詞は作る必要はないし、業者の連絡先も管理会社に保管してもらいましょう。
銀行口座の管理は会計担当、理事長、管理会社の各々の確認を必要とする体制に
管理組合では理事長印と、銀行印を作ります。理事長が印鑑を押さなくてはいけないことが多く、両方の印鑑を理事長が保管していたりもしますが、銀行印は会計担当に保管してまらいましょう。通帳は管理会社が保管し、3者が確認しないと支出できないようにします。
修理見積もりなどは必ず複数業者から見積もりを取る。
日常的な修理は出入りの業者に発注したりもしますが、金額が張る場合は、複数業者に見積もりを取るようにします。同時に複数の業者に見積もりを取るよりも時期をずらしてとった方が良いようにも思います。
業者も、担当者の人柄、会社のコンプライアンス遵守の体制を見て、真面目な会社を選別してもいいと思います。
弁護士、会計士、建築家等専門家の助言を仰ぐ体制を作る
管理規約は「標準管理規約」という大変良いテンプレートがあるのであまり困りませんが、新たに細則を作ったり、改正する、何らかの契約書を作成する場合などは、弁護士に助けてもらうのも良いことです。素人が作った契約書や条文は専門家は見るとすぐわかるそうです。管理規約や細則に記載してある事項は最悪の場合裁判でも参照される重要なものですから、ちゃんとしたものを作っておきましょう。
大抵は管理会社が実際の会計を担当しており、管理会社でも日々の会計は会計事務所に依頼していたりしますが、会計監査については別の会計事務所にお願いすると良いでしょう。
弁護士事務所にしても会計事務所にしても管理組合からの依頼は結構あり手慣れたものです。
専門家には専門委員会のメンバーになってもらうのもいいし、監事として出席してもらうのもありでしょう。組合員の方にもそのような仕事をしておられる方もいる可能性もあるので、別に募集をかけてみるのもよいですね。
個人情報保護には神経を尖らせる
いうまでもなくマンション管理組合は個人情報保護団体です。個人情報保護法に基づき、集めた区分所有者や居住者の個人データを管理し、請求があれば閲覧できる体制や仕組みも作る必要があります。
そのような仕組みを作っても、理事は同じマンションに住む人の情報をお互いに見ることができてしまいます。
理事会に出ると、管理会社が毎月管理費・修繕積立金の滞納者についての報告をします。「誰々さんが滞納しているよ」みたいになってしまうわけです。そのようなネガティブな個人情報を知ったときに、あからさまに口外はせずとも内緒で話してしまうような理事も出てこないとは限らないというか、多分出てきます。
このような事態になると管理組合そのものの信頼が揺らぎます。ですので、個人情報保護細則を作りましょう。管理組合会社からの滞納情報の報告は、理事会では件数にとどめるとか、本当に必要な事態にならない限り、当該の住民との連絡は管理会社経由とし、直接の接触はしない形にするなどプロトコルも決めておいた方が良いですね。