無関心をなんとかしたい

 管理組合の理事会では、前に触れたように「管理計画認定制度」の認定基準にある項目を達成するための活動と、日々管理会社が理事会での話し合いや決議を求めてくる議題の討議を主にこなしていくことになるでしょう。実際に理事になってみると、管理会社に用意してもらった仕組みは最低限のもので、自分が住むマンションをもっといすみやすくするには他にもするべきことが多くあることがわかります。

住民の無関心をなんとかしたい

 理事や監事等、何度かやってみて特に痛感したのが、この住民の無関心です。一戸建てなら自分の家のどこかが壊れそうとか、庭やポートをきれいに使いたいとかは自らなんとかしなくてはいけませんが、マンションの場合は無関心でいることができてしまう。

 無関心だけならまだ良い方で、口コミサイトで一生懸命自分が住むマンションのいわゆる悪口を書いている人たちもいる。理事会をやっていると、「文句があるなら自分で理事会に入って、改善しなさいよ」と言いたくなります。ホームページ等を作って「意見受付」などしようものなら、担当の理事がめげるようなことを平気で投稿してくる方々もいます(だから、ホームページ作りましょうと気軽に言わない方がよい)。マンション外の人たちに悪態をつくくらいなら、理事会に来て貰い、理事と話し合えば良いと思うのですが。

 それでもやはり大きな問題は、住民の無関心です。

 実際、無関心でいることが結構な問題にまでなってしまっているマンションもよく見聞きします。理事長が建設会社とつるんで不当な価格で補修工事を発注していたり、本来管理費として支出してはいけない費用まで出していたり。総会では議事が出ますが、理事会がいつも正しい活動をしているとは限りません。無関心な住民は、実は問題がある議事もよく読まずに「賛成」してしまうことが多々あります。そんなおかしいことになることをを防ぐ一つの方法は、皆が関心を持つことです。そして関心を持ってもらうためにすると良いこと、それは、やはり理事会に関わってもらうことです。

理事・監事・副理事長を増員する

 理事等を経験することで自分が住んでいるマンションへの関心は確実に高まります。

 ですが、最近のマンション、特にタワーマンションなど大規模なマンションは一棟で800〜1000戸くらい住戸があります。それに対し、理事会の理事の数は当初は20人程度に設定されています。これつまり、住戸によっては40年経たないと理事にならないということです。毎年20人程度が理事を経験していっても当面、多くの人は「誰かがやってくれているんでしょ」くらいにしかなりません。どんなマンションでも、大きな支出がある第一回目の大規模修繕工事の話が出てくる新築後12年くらいまでに、全住戸の住民が理事などを経験すると良いですね。

 国交省の「標準管理規約」のコメントでは、

理事の員数については次のとおりとする。

1 おおむね10〜15戸につき1名選出するものとする。

2 員数の範囲は、最低3名程度、最高20名程度とし、○〜○名という枠により定めることもできる。

となっています。この数字が大規模修繕を意識しているのかどうかはわかりませんが、10年から15年くらいのうちに理事を経験することを推奨しているようにも取れます。ですが、例えば750戸のマンションでは理事が50人にもなってしまい、集まる場所の確保も納得のいく話し合いも難しくなってしまいます。コメントでは、

 3 200戸を超え、役員数が20名を超えるような大規模マンションでは、理事会のみで、実質的検討を行うのが難しくなるので、理事会の中に部会 を設け、各部会に理事会の業務を分担して、実質的な検討を行うような、複層的な組織構成、役員の体制を検討する必要がある。

とあります。この辺りは工夫次第、駐車場、共用棟、植栽など何人かの理事がチームになって改善をして行きたい箇所は多くあります。理事が増えても知恵を出さなくてはいけない業務は十分にあります。

 一つ重要なのが、理事会の決議は理事全員が参加して行うということ、理事は大変でも理事会には出席しなくてはいけません。

専門委員会を立ち上げる

 管理組合への関わり方として、理事や監事としての他に専門委員会の委員として関わる方法もあります。

 マンションの維持管理には専門的な知識が必要な事柄が多くあります。特に建設系、建築設備系、法律系の専門知識がよく必要になります。また、地震等災害に対応するための準備は消防系、医療系の専門知識も必要になります。大規模マンションなら、マンション全体でそれらに関わる仕事をされている方がたいていおられます。そういった方々に専門家としての知識を少しお借りして、マンションに役立ててもらうのは大いにありです。外部から専門家を呼ぶ選択肢もありますが、まずはマンション内の専門知識を持った方に協力してもらうと良いでしょう。

 専門委員会は理事会の下に組織される、専門家や学識経験者、知見を持っている人たちの諮問機関です。理事の何人かに専門委員会の担当になってもらい、専門委員会のメンバーと問題点について討議し、最終的には理事会に具申します。専門委員会の出した案が適当であれば、理事会で可決して実行するなどの流れになります。専門委員会のメンバーは要求される分野においてある程度以上の知見を持っており、公明正大にマンションのための意見や判断ができる方々で構成するのが重要です。知識もあまりないような方がメンバーにいると、専門委員会の具申する内容さえも疑わざるを得ない話になってきます。

 専門委員会に専門家がいるからと言っても、最終決断は理事会がすること。専門委員会立ち上げの際には管理規約にその運用していくための細則を作らなくてはいけません。新たに作った細則は総会決議が必要です。

理事の任期を2年にする

 先の国交省の「標準管理規約」のコメントにもありますが、理事の任期を2年とするのは大変有効な手段と思います。区分所有者の皆さんの多くは理事など初めての方ばかりです。1年目は理事会はこんなことをするところなんだと勉強し、2年目に、ではこんなことをしようという風にするイメージです。1年毎に半数の理事を改選していくようにすれば、前年度の活動でやり残した問題への対処などの引き継ぎもスムーズに進みます。

 理事会の定員を増やし、任期を2年にする。さらに専門委員会を立ち上げ、管理組合の活動への住民参加を促す。決して無理強いはしないのは大切ですが、これらの手法、ぜひ検討してみてください。