理事会に出席する前に

管理規約を確認したい

 新築マンションに入居して数ヶ月経ったころ「○○団地管理組合設立総会のご案内」というチラシと「理事就任のお願い」の文書がポストされ焦っている(←大抵の人はそうなります)人も多いでしょう。マンションの管理組合の理事とか、学校のPTAの役員になれとかというのは、鼻から嫌だと思っている人も多いと思います。が、実はそんなに嫌うことでもない。

 PTAの役員になれば、担任の先生と話したり、子供の様子を度々見る楽しみもあります。

マンション管理組合の理事は、自分がこれから暮らしていくマンションをよくしていく、夢のある仕事です。

理事の仕事とは?

 入居時(か、管理組合の設立総会時)に配布された管理規約の第6章第1節の最初、第32条か第34条か第36条に書いてあるので見てみてください。

第32条 管理組合は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。

一 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第48条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理

二 組合管理部分の修繕

三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理

四 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務

五 適正化法第103条第1項に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理

六 修繕等の履歴情報の整理及び管理等

七 共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務

八 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為

九 敷地及び共用部分等の変更及び運営

十 修繕積立金の運用

十一 官公署、町内会等との渉外業務

十二 マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務

十三 広報及び連絡業務

十四 管理組合の消滅時における残余財産の清算

十五 その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務

 いきなり規約の条文が出てきます。そう、管理組合は主にマンションのハードウエアについて議論する、住民の親睦会などとは違う真面目な組織です。大きなお金の使い道も決定するし、生活の切っても切れない部分の大切な決定も行います。自治会と混同する人もいますが、もっと堅苦しい組織です。

 最近のマンションではほぼ全てに、分譲した不動産会社関連のマンション管理専門の会社が管理会社として入っていることと思います。上記の業務の多くは管理会社が実務を担当し、その業務をスタートさせています。ですが、業務の中でも管理会社が勝手に決められないことも多く、理事会ではそれをどうするかを決めていかなくてはいけません。基本は多数決です。

 理事会の進行も管理会社の担当者がリードしてくれますから、そこのところはあまり心配することはありません。

第一回の設立総会か理事会で3役が決まる

 最初の総会で理事が決まり、第一回目の理事会で、互選かくじ引きで、理事長(1名)、副理事長(1名)、会計(1名)、監事(2名)が決まります。

 会計は管理会社がすでに会計を始めていて、月次報告等を出してきますので、普段はそれをチェックする。支出で会計の印鑑が必要な場合、理事会の後などに押印します。押印が必要になるような支出は、理事会で議題として出されていることが多く、最終確認みたいなものです。また一年毎の決算書類の確認も必要です。

第40条 理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する。

2 理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない。

3 会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。

お目付け役の監事

 監事は理事会のメンバーではなく、理事会に出席しても議決権はありません。理事会が変なことを決めたりしないか、変な支出を認めたりしないかを監視する役目です。決算の会計監査も監事が行います。

第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。

2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。

3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。

4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。

6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。

7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。

実は理事長が結構大変な仕事です

第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。

一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項

二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。

2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。

3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。

4 理事長は、○か月に1回以上、職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。

5 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。

6 管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。

 この第38条以外にも管理規約のあちこちに「理事長は‥‥‥しなければならない」という文言が出てきます。管理規約にある「すべきこと」の全部はとてもできないので、少しずつでも何年かかけてできるようにしていくくらい、ほどほどに頑張るくらいにしておかないと燃え尽きてしまいます。無理をしないようにしましょう。

理事会であるとよい仕事

 理事長は、理事に「区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的」とする業務を委託します。特に理事会であると良い業務がいくつかあります。

・「防災」「広報」「建物の維持管理」「管理計画認定対応」

はぜひあった方が良い分担業務です。

 大抵のマンションでは消防法により防火管理者を置き、年一回の防災訓練をすることが義務づけられています。防火管理者の資格は日本防火・防災協会が主催する防火・防災講習を受講することで取得できます。管理会社との契約内容にもよりますが、理事の1人が防災担当となり、管理組合が費用を出して防火管理者の資格をとってもらうことが多いようです。

 建物の維持管理は、管理組合の大変重要な仕事の一つです。建物の動いている部分、揚水ポンプや、浄化槽、自動ドアなどは壊れたりしますし、鉄の部分は錆が出ます。外壁の特にシーリングは劣化すると雨水が躯体にまで浸透し、躯体の強度が低下し危険な状態になります。屋上の防水も劣化すると雨漏りの原因になります。

 日々の点検は管理会社が行ってくれますが、十数年に一度よく行われるのが大規模修繕です。大きなお金が出ていくことなので、計画的に進めることが大切です。

 2023年から本格的に始まった「管理計画認定制度」というものがあります。正にそのマンションがよく管理されているかを認定するもので、認定されるということは管理的には「良いマカンション」とオーソライズされるということです。認定されることで「マンションすまい・る債」の利率が上乗せされたり、認定マンションを購入する人が融資を受ける際にフラット35の金利が優遇されたりします。

 理事会を進めていくうちに、理事会で決めた内容や、抱えている問題をどう住民の皆さんに知らせるかがじわっと問題になってきます。理事会は結構仕事があるのに、何にもしていないと思っている人たちもいます。区分所有者である以上、本人も管理組合の一員(だから、マンションを住みよくしていくのは本人にも責任がある)のに、外部の口コミサイトにマンションの批判ばかり書き込んでいる人もいます。

 この管理組合の仕事の成果などを、メールがいいのか、ポストがいいのか、掲示板に貼るのがいいのか、色々な方法はありますが、大変な手間がかかったり、個人情報保護の問題もあって、そう簡単によい方法が見つかりません。そこを知恵を絞って住民の皆さんに伝えるのが広報の役割と言えます。

それ以外はとりあえずなんでもやってみよう

 それ以外はこの目的に沿った業務であれば結構なんでもできます。しばらくマンションに暮らしていると「ここは改善したい」という思いが出てくるものです。

 自分がそれを改善したいと思えば、それを理事会で「私はこの業務を担当します」とか「してみたい」と手を挙げればいいのです。中庭の植栽をもっと良くしたいとか、駐車場が空いてるから2台借りれるようにしたいとか、ロビーは閑散としているから有効活用できないかなとか。管理組合の目的に沿った活動で、理事会の承認が得られれば、とりあえずは何でもありです。だから前の日は、自分のアイデアでより素晴らしくなったマンションの夢をみたいものです。


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管理組合関係の書籍は多く出ていますが、その大本である国交省のサイトや制度について正しく理解した上で読まないとトンデモ解釈になったりします。気難しい内容ですが、頑張って目を通すといいでしょう。

令和5年度版 新選マンション管理基本六法
(公財)マンション管理センター(著/編集)

第1編 区分所有関係
第2編 マンション管理適正化関係
第3編 規約・委託契約関係
第4編 マンションの建替え・再建関係
第5編 民法その他の関連法規関係
第6編 建物・設備の維持保全関係

インターネットで調べることもできますが、一冊は常備しておくと理事会などで役に立ちます。
令和6年度版がもうすぐ出るのでそちらのリンクを貼っておきます。

令和5年度版 マンション管理の知識
(公財)マンション管理センター(著/編集)

第1編 マンションの管理の適正化に関する事項
第2編 マンションの法令及び実務に関する事項
第3編 管理組合の運営の円滑化に関する事項
第4編 マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関する事項

令和6年度版がもうすぐ出るのでそちらのリンクを貼っておきます。