理事会に出て何をしよう?

  • 管理組合とはこれから何十年付き合っていく私たちのマンションで快適に暮らしていくための様々なことをしていく組織
  • 建物のハード側を管理するためのお堅い組織でもある。公明正大な運用を心がける
  • 理事会の当面の仕事としては「管理計画認定制度」の認定基準を満たすことを目的としても良いだろう
  • 専門家の集まりではないので、ゆるゆると。

 一戸建てだろうとマンションだろうと、家を買ったらメンテナンスは必要です。メンテナンスしないと雨漏りしたり、床が抜けたり、外壁がボロボロになってきたり、庭は荒れ放題とか色々なことが起こります。日本の全就業者における建設業従事者の割合は7.1%(2022年)、すなわち残りの92.9%の方々は建設・建築に関しては素人な訳です。「マンションは建物を自由にできないから一戸建てがいい」という人もいますが、多くの人は自由にできるといっても何をどうすればいいの?状態でしょう。

 なんてったって、マンションのメリットは管理組合があることです。専有部分は自己責任になりますが、外壁の痛みや屋根の防水、中庭の整備などは管理組合でやります。管理組合で皆が話し合ったり、信頼できる専門家に関わってもらったりして建物を常に快適に保っていくためのことができる。こんなにいい仕組みは一戸建て暮らしではあり得ません。

 管理組合は前にあげた管理規約の業務内容のように、かなり建物のハード側によった仕事をこなしていくかなりお堅い組織です。管理組合のメンバーは建物の区分所有者であり、分譲賃貸で住まわれている方とは関係のない組織です。管理費はマンションの資産的価値を向上させるため、よく管理された建物であるために徴収しているお金です。区分所有者の多くが納得できるような使途に限った方が良いでしょう。

 住民同士のコミュニケーションを図るなら、居住者を対象にしているマンション自治会を別に設けると良いでしょう。

管理組合を運営していく一つの目標になる「管理計画認定制度」

 2022年より管理計画認定制度という制度が始まりました。マンションの管理に必要な業務がきちんとなされているかを確認する制度です。マンションが良好に管理されていれば、「良いマンション」であると認定され、マンションに住んでいる人や購入しようとする人たちにメリットのある制度も設けています。現在のところ、この管理計画認定取得マンションはまだ少数と思いますが、これからどんどんと増えてくるでしょう。

 この制度の認定基準ですが、なかなか良いところを押さえています。管理組合が当面はこの認定基準を満たすように業務をこなしていくことを一つの目標とすれば良いでしょう。

管理計画認定の基準管理規約
○管理組合の運営
・管理者等及び監事が定められている(理事長)
第40条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。
2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。

第37条 管理組合に次の役員を置く。
  一 理事長
  五 監事 ○名
・集会(総会)が定期的に開催されている(年1回以上開催が行われていること)(団地総会)
第44条 管理組合の団地総会は、総組合員で組織する。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。
○管理規約
・管理規約が作成されている
・管理規約にて下記について定めている
・緊急時等における専有部分の立入り第23条 前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
4 前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
・修繕等の履歴情報の保管
・管理組合の財務・管理に関する情報の提供(理事長)
第40条
3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
・修繕積立金の滞納に適切に対処されている(修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること)
○長期修繕計画の作成及び見直し等
・長期修繕計画(標準様式準拠)の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金が集会(総会)で決議されている(業務)
第34条 管理組合は、団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理のため、次の各号に掲げる業務を行う。
三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
・長期修繕計画が7年以内に作成又は見直しがされている
・長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
・長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない
・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている
※下線部:長期修繕計画ガイドライン等、マンションの修繕積立金に関するガイドラインと紐づけている内容

 これだけの聞き慣れない業務を素人集団の理事会が遂行していくのはまず無理でしょう。出てくる言葉も知らないものばかりです。ですが、幸いなことに大抵のマンションでは新築時にデベロッパーの関連会社の管理会社が初めから付き、素人ばかりの住民でも当面は安心して暮らせるように配慮してくれています。管理規約や、長期修繕計画も雛形があり、第一回の総会で承認し、理事会を発足させればそれなりの形になるようにしてくれています。だから焦る必要はありません。管理組合の運営も3年5年単位くらいでじっくりと取り組み、議論を尽くした方がいい。短絡的に軽く考えて色々とやってまうと、住民の誰かが困った状態になったり、全く意味をなさないことになってしまったりします。

実は管理計画認定制度を補完する制度がいくつかあります

 管理計画認定制度は公益財団法人マンション管理センター(と名乗っていますが、実はマンション管理適正化推進センターの略)を通して都道府県庁や市区役所の担当窓口に申請し認定される仕組みですが、他に、
マンション管理適正評価制度(一般社団法人マンション管理業協会)
マンション管理適正化診断サービス(一般社団法人 日本マンション管理士会連合会)
という制度があります。

 「マンション管理適正化診断サービス」は、無料でマンションの管理状況についての診断サービスが受けられるというものです。診断内容は管理計画認定制度に申請して認定されるかどうかの目安になります。良さそうでしたら、管理計画認定制度の申請を行って見るという流れになるでしょうか。

 もう一つのマンション管理適正評価制度は管理計画認定制度の認定項目が16であるのに対し30項目の細かい評価項目を設け、さらに細かくマンションの管理状況を評価するというものです。管理計画認定は認定後5年間有効ですが、評価制度は一年更新となっています。

 この三つの制度を上手に使いこなしていくとよいですね。

専門家の集まりではないので、ゆるゆると

 もしかするとこれが一番大事な事柄かもしれません。理事になった人の多くが建設業とは関係のない仕事をしておられることと思いますが、修繕計画な修繕工事などはやはり専門家の知識や経験が必要な領域です。

 幸いなことに建物は徐々に劣化していきます。修繕工事が必要になるのは当分先です。最初のうちは、今、自分たちが住んでいる建物のことをよく知るためのことを最優先するとよいと思います。そして、ある程度、どのような状態なら修繕が必要なのかとか、どのように修繕すれば良いのかとかを判断できるだけの知識を身につけていきましょう。